ウサギとヒナ 第一話 運命の糸

小説
Pocket

 ウサギさんから誘われるとは、思わなかった。良かった、これでちゃんと……。

「みんなには、内緒な」

 耳元で囁くように言われ、ドキッ。足元にオフシールのシートをバラまいてしまった。

「大丈夫?」
「あ、はい」

 顔を上げると私の真上でウサギさんがのぞき込んでいる。動揺して、せっかく拾ったシートをまた落としてしまうことに。

「ヒナちゃん?」
「す、すみません」

 ちゃんと話せるかな、私。

 オープンしてからの会場の光景は凄まじいの一言に尽きる。
 売り場もフィッティングルームも入場制限になるほどの来場者数。AUの売り場内も隙間がないほど大混雑。 
   
 ひとまずスタッフの多くが通路で落ち着くまで、傍観。それでもウサギさんは、空いたラックを見つけては、裏から商品を運び、ラックへ掛けていく。
 しかもお客様の問いかけにもちゃんと対応して、すごいな、ウサギさん。

小説更新、諸々のお知らせはtwitterで

PVアクセスランキング にほんブログ村