ウサギさんから誘われるとは、思わなかった。良かった、これでちゃんと……。
「みんなには、内緒な」
耳元で囁くように言われ、ドキッ。足元にオフシールのシートをバラまいてしまった。
「大丈夫?」
「あ、はい」
顔を上げると私の真上でウサギさんがのぞき込んでいる。動揺して、せっかく拾ったシートをまた落としてしまうことに。
「ヒナちゃん?」
「す、すみません」
ちゃんと話せるかな、私。
オープンしてからの会場の光景は凄まじいの一言に尽きる。
売り場もフィッティングルームも入場制限になるほどの来場者数。AUの売り場内も隙間がないほど大混雑。
ひとまずスタッフの多くが通路で落ち着くまで、傍観。それでもウサギさんは、空いたラックを見つけては、裏から商品を運び、ラックへ掛けていく。
しかもお客様の問いかけにもちゃんと対応して、すごいな、ウサギさん。