ウサギとヒナ 第一話 運命の糸

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 オープン前の売り場は、閑散としている。時間まで会場をうろつく人もいれば、ワゴンの商品を陳列しなおしたり、ボディの服を着せ替えたり、トイレへ行ったり。
 通路を忙しなく歩いているのは運営本部の人くらい。

 AUは売れ筋ブランドの一つで、与えられたスペースは他と比べれば結構広い。
 在庫を処分するためのセールとはいえ、中にはついこの前まで店舗販売されていた物が含まれている。五十パーセントのオフシールをつけているのが、それ。
 ラックに掛かった商品の下げ札を一つずつ確認していると。

「ヒナちゃん、こっち来てくれる?」

 驚いて振り返った。
 今、私を呼んだの、ウサギさんだよね。ヒ、ヒナちゃんって、呼ばなかった?

「あれ、ダメだった?」
「いえ、全然ありです。みんな、そう呼んでいますから」

 平気なふりをして答える私にウサギさんがオフシールを差し出す。

「この辺、ついてないから、頼む」
「はい」

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