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「ちょっと、これどうしたの?」
「もしかしてユキ君にもらったの?」
昼休み早々、先輩二人に見つかってしまった。でも、これは想定内。だって三島や林さんは、ちょっとした変化にも敏感で。
周囲の人が口紅の色や香水を変えたり髪の色が変わると必ずチェックが入る。
「いいなぁ、私も指輪とか腕時計とか欲しい」
三島さんは、ぼやきつつも大きな口を開けて私と同じA定食のデミグラスソースたっぷり掛かったオムライスをパクリ。
「しかも相手がユキ君だもんね、羨ましい」
「ひょっとして婚約したとか言う?」
「し、してません」
「確かに、婚約指輪にしては地味だよね。ダイヤも着いてないし」
「ペアリングなんです」
「ペアリング?」
二人とも目を丸くさせている。そんなに驚くこと?
「変ですか?」
「学生でもないのにペアリング? しかも左手薬指でしょう?」
「自分だって時計しているじゃない」
「これは……その」
林さんの顔が赤くなっていく。私のことはいいのよと小声でボソッと言って窓の外へ顔を向けた。
「ねぇ、どこのブランド?」
「ティファニーです」
「高かったんじゃない?」
「そんなビックリする値段じゃないですよ。でも、頑張りました」
「頑張った?」
「はい」
私は薬指の指輪を眺めながら、昨日のことを思い出していた。