まずは生ビールで乾杯。
「あーっ、美味い」
三人とも完全親父状態、生ビールを一気に半分飲み、プハーッと息を吐きながら手の甲で口を拭く。
「残業の後のビールって、最高」
「なんか、おっさんらと来てるみたいだな」
苦笑いする部長を尻目に、田口さんがビールのお代りをする。ついでに大根サラダと鶏モモのタタキも注文。そうこうしているうちに、鍋が煮立ってきた。さっそく器へスープを注ぎ、味見。
「美味しい、何これ」
「ああ、本当だ。いける」
「でしょう」
箸袋を見ると、他にも二店舗出していることが判明。メニューを広げてみた。値段もコース料理に飲み放題つけて四千円って書いてある。ちょっと、いいかも。今度、ユキ君誘ってみよう。
それにしても、田口さんて、気が利く人なんだな。皆のお皿にもつ鍋をよそってくれたり、スープの追加や野菜を注文したりと、会社と同じようにテキパキ動いて。思わず感心してしまった。どうやら土方さんも同じことを思ったらしく。
「いい奥さんになるな」
褒めの一言。でも田口さんはあまり嬉しそうではなく。むしろ、不満そうな顔をする。
「そうですか?でも彼氏は、そう思ってないみたいです。なかなかプロポーズしてくれないし」
「彼氏がいるのか」
「いますよ。もう三年半、同棲してるんですけど。結婚のけの字も言ってくれません。私のどこが、悪いんでしょうか」
「楽なんだろうな」
部長はグビッとビールを飲み干し、ジョッキを軽く持ち上げお代りを注文した。