恋の時間ですよ 第11章 嫉妬

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「そうかも。家事は全部、私がやってるし。結婚する必要なんて無いですよね」

「生活費は?」

「食費だけ、私が。と言っても、彼は仕事がハードで帰りも深夜だから、あまり家で食事しないんです」

「何やってる人なんですか?」

思わず、聞いてしまった。

「取引先で駐在SEしてるの」

「へぇ」

「彼の頭の中は私生活より、仕事でいっぱいみたい。四月から優秀な部下が別の企業へ異動するらしくって、これから大変だってぼやいてたし。でもね、部下はしっかり結婚してるのよ。それも今年に入って二人よ、二人。なのに自分の結婚は考えないのかしら」

田口さんの話す声が少し大きくなった。話しているうちに、だんだん腹が立ってきたって感じで、ちょっとお怒りモード。

「今夜は徹底的に飲んじゃう。すみませーん、日本酒ください」

スタッフが持ってきた一升瓶。名前も浮世絵のラベルも珍しくて。

「撮ってもいいですか?」

スマホで角度を変えながら撮影させてもらった。ついでに私も一杯、もらう事に。だって、どんな味か試してみたいしね。

「美味しい」

上品な甘さ、口当たりも良く、飲みやすい。くどき上手なんてネーミングもいいし、ユキ君と飲みに行ったときに使えるかも。
なんて思っていたら、テーブルの上に置いた田口さんのスマホが振動。

「あ、すみません。ちょっと電話してきます」

急いで店の外へ。それからすぐ戻って来て。

「彼氏が今から帰って来るみたいなので。すみません、お先です」

大慌てで帰って行った。

「嵐みたいな奴だな」

土方さんは苦笑い、俺も日本酒頼もうかな、とメニューを手に取った。

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