「寒いよな、これ着て」
それから指先すら出ない大きなダウンコートを私に着せ、私の手を握って歩き出す。
「ユキ君、どこへ行くの?」
そこは近くのコインパーキングで、ユキ君の乗ってきたBMWがとまっている。
「乗って」
助手席のドアを開けられたが、素直に従えなくて。
「でも、店があるし」
「お兄さんがいるだろ」
「でも、みんなまだいるのに」
ユキ君は私の顔をのぞき込み、にっこり笑って。
「放っておけばいいよ」
そう言われてもね。自分の中のもやもやが治まらなくて、私は視線を落とす。
「それで、どこへ行くの?」
「ホテル」
「いきなり、ホテル?」
「舞との時間を誰にも邪魔されたくないから、ホテルが一番いいんだよ。舞は俺の体、触りたくないの?」
そりゃあ、触りたいけど。ユキ君の肌に触れたいけど。スリスリしたいけど。
「好きなだけ触っていいから、機嫌直してよ。頼むよ、舞ちゃん」
「好きなだけ?」
「ああ」
「いっぱい、触っちゃうよ?」
「いいよ」
ギュッと抱きしめられて、私の心が揺らぐ。
あんなにイライラしてたのに。
甘い誘いに、私の機嫌はすっかり良くなっていた。