天王寺駅に着いた私は改札口を出て、待ち合わせのデニーズへ向かった。
ホットココアを飲みながら、待つこと十分。黒いコートを着たユキ君が店内に入って来るのが見えた。
窓際の席から小さく手を振ると、笑顔が返って来る。
彼はコートを向かいの席へ置き、私の隣に腰を下ろしてスタッフを呼び止め、珈琲を注文。
「仕事帰りに、ちょうど舞の所へ寄ろうかと思ってたんだ。飯食った?」
「うん。インドカレーのお店に行ってきた。三島先輩に教えて貰ったお店なの」
「へぇ、美味かったか?」
「うん。今度、一緒に行こう」
にこにこしている彼を見ると、なんとなく切り出しにくい。
でも・・・。
「ユキ君、何か私に話すことない?」
ユキ君から笑顔が消えた。察しがついたのか、目が泳いでいるだけで黙っている。
「いつ、異動するの?」
「誰から聞いた?」
「先に、私の質問に答えて」
「年明け早々。で、誰から聞いたんだ」
「土方さん・・・」
「あいつ、しゃべりかよ。異動ったって、北工場だぞ。そんな遠くへ行くわけじゃねぇんだから」