上階のレストラン街へ行き、インドカレー店へ入った。メニューも豊富で美味しくて本格的なインドカレーが楽しめる、と三島さんお薦めのお店。
部長と向かい合って座り、シーフードカレーとナンを注文。
オレンジ色のスープみたいなサラサラのカレーが出てきた。見た目からは辛そうと思えない。口に入れた瞬間は甘く、後から刺激的な辛さが舌に伝わってくる。うーん、癖になる辛さだ。
部長はさっきからカレーにはあまり手をつけず、ナンばかり食べている。
「もしかして辛いの苦手ですか」
「あ、いや。まぁ、そうなんだ。けど味は美味しいし、ゆっくり頂くから」
「なんか、すみません」
「気にしないで。俺が誘ったんだから。それより、店の方は大丈夫?」
「月曜日は定休日なんです」
「そう、良かった。しかし帰ったら店の手伝いなんて、偉いよな。感心する」
「そうでもないですよ。慣れてるし」
「ユキも忙しいみたいだし、デートする時間あるの?」
ユキ君と付き合っていることを知っている人は多い。彼が隠そうとしないから。
「時間見つけてデートしてます。たまに一緒にランチしたり、朝、公園で珈琲飲んだりとか」
「けどユキが異動したら、会社で会うことも無くなるだろう。増々会う時間が減るんじゃないか?」
異動?私はスプーンを置いて、土方さんに驚きの顔を向けた。
「もしかして聞いてなかった?」
しまったな、と土方さんは口元を掌で塞ぎ。
「ごめん、知っているとばかり・・・」
それ以上はなにも教えてくれず、私も聞きだそうとはしなかった。
とは言え、かなり動揺したのは間違いなく。
駅のホームで電車を待っている間、スマホとにらめっこ。迷いまくったが、やっぱり確かめたくて。
「今から会える?」
電話をした。