「ツリーやリースまであるのか、本格的だな」
そう言いながらユキ君はLEDファイバーツリーをテーブルの側に置き、コンセントにつないだ。スイッチを入れると赤、青、緑、黄色と様々な色へ変化するツリー。
「だってクリスマスだもん。雰囲気は大事でしょう」
紙袋からタッバを取り出し、お皿に盛りつける。紙皿ってのが、ちょっと寂しい気もするけど。
「すごい、ご馳走だな。これ全部、舞が作ったの?チキンにポテトサラダに、おいなりさんと散らし寿司?」
「変だったかな。でもご飯物って食べたくならない?汁物はインスタントで我慢してね」
「舞らしいな」
ユキ君は半笑い、私を抱き寄せてキスをする。今日、何度目のキスかな。
クリスマスプレゼントが思いつかなくて、欲しい物はない?と尋ねてみた。ところがユキ君は、ホテルの部屋で二人だけのクリスマスがしたい、他は何もいらない、そう言った。
デパ地下で食べ物買って、夜景でも眺めながら過ごそうって。
だから料理は私が用意すると手を挙げたってわけ。
「ああっ、見て、ユキ君」
私は窓の外を指さす。茜色に染まった空。海遊館でユキ君と手を繋いで見上げた空を思い出す。あの時、今まで見た中で一番綺麗で、それでいて切なく思えた夕焼け。
「海遊館出た時も夕焼けが綺麗だったよね」
「そうだな」
今日もすごく綺麗だと思うのは、やっぱりユキ君と一緒にいるから。
「ユキ君」
「ん?」
「大好き」
ユキ君は目を丸くし、それから少し照れたように笑った。