中に入っていきなりびっくり、水中を泳ぐペンギン、目の前をビュンッと通り過ぎていった。
「イメージと違う」
ペンギンてのは、じーっとしている生き物だと思っていたから。感心しているとユキ君がクスッと笑う。
「早く泳げないと餌になる魚を捕まえられないだろ」
「なるほど。なんか衝撃的」
とにかく何を見ても楽しかった。
「ああ、ラッコだ。可愛い」
何を見ても面白かった。
「うわっ、ウツボだ。怖い顔ーっ、ははは」
何度も来ているはずのユキ君も「本当だな」って一緒に笑ってくれて。仕方なく承諾したはずのデートなのに、めっちゃ楽しんでいる私。
「鯛だ、鯛。刺身にしたら何人前かな。アジの大群だ。竿入れたら釣れるかな。あー、南蛮着け食べたくなってきた」
見るもの全てが珍しくて、本当に楽しくて、ずっと笑っていた。
「ねえ、ねぇ、岩にへんてこな魚くっついてるよ」
亀の水槽の中を指さす。
「コバンザメだな」
「あれ、サメなの?小さいんだね。何でくっついているのかな。自分で泳ぐのが面倒クサイの?」
「ちゃうちゃう。普通はエイとか大型のサメにくっついてんだよ。でも亀の水層で、くっつく相手がいないから岩に張りついてんだ。ちなみにサメって言うけど、サメの仲間じゃなくて、サバとかの仲間なんだ」
「へぇ、ユキ君、お魚博士みたいだね」
「魚に限らず、単純に海の生き物が好きなんだよ。好きなものは何でも詳しく知りたくなる」
不思議。魚屋の水槽見てもなんとも思わないのに。