恋の時間ですよ 第6章 初めての

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中に入っていきなりびっくり、水中を泳ぐペンギン、目の前をビュンッと通り過ぎていった。

「イメージと違う」

ペンギンてのは、じーっとしている生き物だと思っていたから。感心しているとユキ君がクスッと笑う。

「早く泳げないと餌になる魚を捕まえられないだろ」

「なるほど。なんか衝撃的」

とにかく何を見ても楽しかった。

「ああ、ラッコだ。可愛い」

何を見ても面白かった。

「うわっ、ウツボだ。怖い顔ーっ、ははは」

何度も来ているはずのユキ君も「本当だな」って一緒に笑ってくれて。仕方なく承諾したはずのデートなのに、めっちゃ楽しんでいる私。

「鯛だ、鯛。刺身にしたら何人前かな。アジの大群だ。竿入れたら釣れるかな。あー、南蛮着け食べたくなってきた」

見るもの全てが珍しくて、本当に楽しくて、ずっと笑っていた。

「ねえ、ねぇ、岩にへんてこな魚くっついてるよ」

亀の水槽の中を指さす。

「コバンザメだな」

「あれ、サメなの?小さいんだね。何でくっついているのかな。自分で泳ぐのが面倒クサイの?」

「ちゃうちゃう。普通はエイとか大型のサメにくっついてんだよ。でも亀の水層で、くっつく相手がいないから岩に張りついてんだ。ちなみにサメって言うけど、サメの仲間じゃなくて、サバとかの仲間なんだ」

「へぇ、ユキ君、お魚博士みたいだね」

「魚に限らず、単純に海の生き物が好きなんだよ。好きなものは何でも詳しく知りたくなる」

不思議。魚屋の水槽見てもなんとも思わないのに。

 

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