食堂でチクチク背中に突き刺さる視線が痛い。それもこれもユキ君のせいだ。
「公園のベンチでモーニング、仲良く一緒に出勤か」
「本当にただの同僚なんです」
林さんと三島さんはしらけた顔でそっぽを向き「はいはい」と流して私の話を聞こうともしない。
「信じてください」
「別にいいじゃない。相手はユキ君だよ、何の不服があるのよ。ほら、周りを見て。嫉妬の炎で焼き殺そうとしてる目がいっぱい」
「一人で歩く夜道は危険かも」
「脅かさないでください。ほんっとに違うんですから」
箸を伸ばした先にあったはずのとんかつが、忽然と消えた。
「あれ?」
「うちの食堂のとんかつも悪くないよな」
なんで、また現れるのよ。うちの会社の食堂って確か11時半から2時までだよね。このタイミングの良さ、食堂で働いているとか?
ユキ君は私の隣に座って、もう一切れちょうだいと手を伸ばす。
「だめっ」
さっとお皿を持ち上げ、威嚇。ユキ君は残念そうな顔をして。
「しょうがねぇな。俺も何かとってこよう」
席を立ち、トレーにカレーを乗せて戻ってきた。
「ここのカレー食ったことある?」
「ないよ」
「結構美味いんだ。とんかつ乗せてカツカレーにするともっと美味い」
私のカツをスプーンでさらっていき。
「ちょっと、私の・・・ああっ」
食べちゃった。くそう、どうせならキャベツの千切り食べてほしかった。