ビルの地下は駐車場になっていた。高級車が何台も並んでいる。重役の人達用なのかもしれない。イケメンは白いBMWの前で立ち止まり、私の顔を見た。どう見ても20代前半だよね。それなのに車通勤、しかもBMW?ただの社員じゃないのか?
「これ、あんたの?」
指を差し一応尋ねてみる。
「いや、家のん。俺、まだ入社したばかりだからね。自分の車は持ってないんだよ。かと言って親父と一緒に通勤するわけに行かないし、お袋が乗らないから借りてんの」
お母さんの車なのか。
「お父さんもこの会社で働いているんだ」
「まぁな。ほら乗って」
イケメンが助手席のドアを開ける。乗り込もうとした時、ふと迷いが生じた。乗って大丈夫なのかな。私は彼の正体を知らない訳で、しかも男だよ。車に乗り込んだら最後、変な所に連れ込まれたり・・・。同じ会社に勤めることになったのに、それはないか。
「ちゃんとまっすぐ家まで送ってくれるんだよね」
「何、その疑うような言い方。いやなら電車で帰るか?」
「タクシー呼ぶつもりだったし」
「可愛くないな」
イケメンはジャージの襟を引っ張って。
「だったら、これ脱いでもらおうかな」
ニヤニヤして言う。
「なっ、貸してくれるって言ったのに」
「困ってるから助けてやったんだろ。いくら俺でも傷つくよ。パンツ丸出しで帰りたくないなら車に大人しく乗って。嫌ならジャージはおいていけ」
「うーっ」
それでも迷っていると。
「俺もずっと抜けていられないんだよ。さっさと乗れって」
強引にドアの中へ押し込められてしまった。