恋の時間ですよ 第2章 年下のくせに

小説
Pocket

ビルの地下は駐車場になっていた。高級車が何台も並んでいる。重役の人達用なのかもしれない。イケメンは白いBMWの前で立ち止まり、私の顔を見た。どう見ても20代前半だよね。それなのに車通勤、しかもBMW?ただの社員じゃないのか?

「これ、あんたの?」

指を差し一応尋ねてみる。

「いや、家のん。俺、まだ入社したばかりだからね。自分の車は持ってないんだよ。かと言って親父と一緒に通勤するわけに行かないし、お袋が乗らないから借りてんの」

お母さんの車なのか。

「お父さんもこの会社で働いているんだ」

「まぁな。ほら乗って」

イケメンが助手席のドアを開ける。乗り込もうとした時、ふと迷いが生じた。乗って大丈夫なのかな。私は彼の正体を知らない訳で、しかも男だよ。車に乗り込んだら最後、変な所に連れ込まれたり・・・。同じ会社に勤めることになったのに、それはないか。

「ちゃんとまっすぐ家まで送ってくれるんだよね」

「何、その疑うような言い方。いやなら電車で帰るか?」

「タクシー呼ぶつもりだったし」

「可愛くないな」

イケメンはジャージの襟を引っ張って。

「だったら、これ脱いでもらおうかな」

ニヤニヤして言う。

「なっ、貸してくれるって言ったのに」

「困ってるから助けてやったんだろ。いくら俺でも傷つくよ。パンツ丸出しで帰りたくないなら車に大人しく乗って。嫌ならジャージはおいていけ」

「うーっ」

それでも迷っていると。

「俺もずっと抜けていられないんだよ。さっさと乗れって」

強引にドアの中へ押し込められてしまった。

 

小説更新、諸々のお知らせはtwitterで

PVアクセスランキング にほんブログ村