恋の時間ですよ 第1章 就職しました

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その週の金曜日、面接することになり。

「本当にここ?」

教えられた住所を頼りに来てみれば、そこはオフィスビル街の端っこ。
横を向けばフェンス越しにテニスコートが見えている。公園のテニスコートが会社の隣にあるからすぐに分かるよ、と言われたことを思い出す。

ビルの最上階を見上げれば、壁面に張りついているのは、結びをモチーフにした会社のロゴマークだ。アットホームが売りの会社だから大丈夫だって言われ、それを真に受けていただけに、びっくりし過ぎて呆然としていた。

建設業界は詳しくないが、結城グループの名前くらいは私でも知っている。セメント販売、生コン工場、不動産、娯楽施設などを持つ、関西では有名な会社だ。そこの面接だったなんて・・・・。

聞いてないよーっ。

「商談フロアでお待ちください。あちらのエレベータ―で16階へ上がられましたら右手が・・・」

受付を済ませ、エレベーターホールの前に立ち、ため息をひとつ。面接上手くいかなかったらどうしよう、緊張してまともに話せなかったら・・・・。母親の顔が目に浮かぶ。「ほらね、あんたには無理だって言ったじゃない」と嫌味まで聞こえてきそうだ。

くーっ、だめだって。弱気になってどうすんの。面接もしてないのに、まだ分からないじゃない。瞼を閉じ、深呼吸。

「頑張れ、私」

よしっ、行こう。

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