昼食から戻った私は、引き出しから歯ブラシセットを取り出した。
フロアの奥にあるトイレをのぞくと女性社員が三人、洗面台に向かって立ち、化粧直しや歯磨きをしている。
顔は鏡に向かったまま、視線だけがこちらへ向く。
「そう言えば、彼女も新人よね」
「そうだったわね」
なんか、じろじろ見られているような……。
「それはないでしょう。今日、大阪から転勤してきたのよ。今日の今日で、どうやってそんな仲になるのよ」
「そうか、そうだよね。やっぱりブランド担当かな」
「それにしても気になる。誰だろう」
誰の話なのか気にはなったが、無言で歯磨きを済ませ、そそくさとトイレを後にした。