頬杖ついて、コンコンと爪で机を叩きながら「どこの誰だよ」と正人が追及の目を向ける。
「うちの会社の新人」
「新人? 社内の女には手を出さないって言ってなかったか? 弱みでも握られて、交際迫られたクチ?」
「まさか。むしろ、振られてもしつこく迫ったのは俺の方」
「振られた? 裕也が」
声がひっくり返るほど驚くことか?
「遠距離は無理だって、断られたんだよ」
「遠距離?」
正人の顔が見る見る明るくなっていく。遠距離なら、浮気してもバレないとでも言いだしそうだな。
「週末は大阪に通うことにした。そんな訳でお前と遊んでいる暇はない」
「やめとけよ。遠距離なんて、続かないぞ」
「俺もそう思う。だから手は打っておいた」