カウンター席しか空いていなかった。隣同士の方がマシか。真正面だと、どこ見ていいか分かんないし。
メニューで顔を隠すようにして、ウサギさんをチラ見。横顔もカッコいい。
目が合い、慌ててメニューに視線を移す。盗み見が見つかったみたいな気分。
「決まった?」
「あ、まだ……。すぐ決めます」
ヒレカツ美味しそう、でもエビフライも捨てがたい。迷っているとウサギさんがのぞき込んできた。
ぎゃーっ、そんな近くに顔を寄せたりしないで。
「大エビフラ……。やっぱりヒレカツ……にします」
ウサギさんにどうぞとメニューを押しつける。
ウサギさんは笑顔で受け取ると、店員を呼んだ。
「ヒレカツと大エビフライ、定食でお願いします」
やっぱ隣の方が落ち着かないかも。何気に腕が触れるんだもん。湯呑のお茶をゴクリ。うっ、熱い……。
どうして誘ったの? 偶然エレベーターが一緒になったから?
電話もしてくれなかったのに。今日だってこっち来るって教えてくれなかったし。
言いたいことがいっぱいあるのに、場所が場所なだけに聞けない。
ああ、もうやだ。モヤモヤしたものが溜まっていくよ。