ウサギとヒナ 第二話 繋がる糸

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 カウンター席しか空いていなかった。隣同士の方がマシか。真正面だと、どこ見ていいか分かんないし。

 メニューで顔を隠すようにして、ウサギさんをチラ見。横顔もカッコいい。
 目が合い、慌ててメニューに視線を移す。盗み見が見つかったみたいな気分。

「決まった?」
「あ、まだ……。すぐ決めます」

 ヒレカツ美味しそう、でもエビフライも捨てがたい。迷っているとウサギさんがのぞき込んできた。
 ぎゃーっ、そんな近くに顔を寄せたりしないで。

「大エビフラ……。やっぱりヒレカツ……にします」

 ウサギさんにどうぞとメニューを押しつける。
 ウサギさんは笑顔で受け取ると、店員を呼んだ。

「ヒレカツと大エビフライ、定食でお願いします」

 やっぱ隣の方が落ち着かないかも。何気に腕が触れるんだもん。湯呑のお茶をゴクリ。うっ、熱い……。

 どうして誘ったの? 偶然エレベーターが一緒になったから?
 電話もしてくれなかったのに。今日だってこっち来るって教えてくれなかったし。

 言いたいことがいっぱいあるのに、場所が場所なだけに聞けない。
 ああ、もうやだ。モヤモヤしたものが溜まっていくよ。

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