私の背中に手を添えて、部屋へ戻ろうと言うユキ君のシャツを掴んで引き留め、顔をのぞき込む。
「彼女、前に来た時は、何にしに来たの?」
「さあ? 部屋に入れたと言ってもトイレを貸してやっただけだし、すぐに呼んだタクシーも来たから」
話をさせる隙を与えなかった?
多分、ユキ君は彼女の気持ちに気付いている。
知らん顔しているのは、彼女が会社で働きにくくなると思ってのこと、なのだろう。
「ユキ君のこと好きだよね、多分」
「どうでもいいよ、それより」
ひょいとユキ君が私を持ち上げた。
「いきなり、何? ビックリするじゃない」
「帰るって言われたら困るから拉致ろうかと」
私は、ユキ君の首に腕を巻きつけてクスクス笑った。
「帰らないよ」
リビングへ移動、私を抱いたままソファへ腰を下ろした。
ユキ君に跨れば、目の前には、彼の盛り上がった胸が。
触れようとすると、手を握られ阻止。触らせてくれないつもりか?
「疑い、晴れた?」
「してないんでしょう? だったらもういい。それよりこの手、離してほしいんだけど」
ユキ君は、まだダメと言って手を離してくれない。
「舞以外の女に興味ねぇよ。他の女と遊ぶ時間があるなら、お前と会いたい」
私を喜ばせるセリフをサラッと言うなんて、ズルいな。