「飯島さん、俺の心配はしなくていいから」
私の手前、何しにきたんだ、って冷たく追い返すのかと思ったのに。
「飯島さんから見れば、俺はまだ若いし、経験も浅いから頼りなく映るかもしれないけど、最近はおっさんらに揉まれて、図太くなってきたんだ。飯島さんたち従業員が一丸となって頑張ってくれているし、俺を支えてくれる彼女もいるし。俺は大丈夫だから」
ユキ君の口調は柔らかい。気遣いすら感じる。
そうか、会社の従業員だから。
「そ……そうですね。余計な心配でした」
「ありがとな。ところで伊藤は? 一緒なんだろ?」
「はい」
「だったら今夜はタク呼ぶ必要ないよな。気をつけて帰れよ」
そう言うとドアを閉めた。
「ユ、ユキ君、いいの?」
「いいよ」
本当に? ドアの向こうが気になるなぁ、なんて思っていると。
「飯島ちゃんっ……。はっはっはっ、人がコンビニ寄ってる間に消えるのやめてよ。はっはっ……心配したんだからな」
息を切らして話す男性の声が聞こえた。
「ごめんね、伊藤君。もう用事済んだから、帰ろう」
「えっ、でも、由紀さんの顔見たいって」
「いいの、もう。ほら、行こう」
◆◆◆