たっぷりユキ君との時間を楽しんだ。はずなのに物足りない。もっと一緒にいたいと思ってしまう。
一緒にいればいるほど、バイバイする時間が迫ってくると切なくなる。
どうしたらいいんだろう。
朝食の後片付けをしていると背後からスーツを着たユキ君に抱きしめられた。
「えっ、もう出る? ごめん、すぐ私も」
「舞」
「ん?」
「これ」
目の前には彼の手が、つまんだ鍵が揺れている。
先に出るから、鍵掛けといてってことね。私はそれを両手で受け取った。
「玄関ドアのポストに入れとけばいい?」
「舞が持ってて」
「そんなことしたら、勝手に入っちゃうよ?」
「いいよ。つーか、それ逆に嬉しい」
「本当かな? 突然きたら、知らない女の人がいた、なんて落ちないよね?」
「あほか、絶対ねぇわ」
笑って、コツンと頭を小突かれた。
「気を付けて行けよ。会社着いたらLINEで知らせて」
「うん」
見送ろうと、玄関先までついていった。
「来週の日曜も泊まりに来てくれるか」
「うん」
私の返事に、ホッとしたのかユキ君の口から小さな息が漏れた。
「じゃあ、店が終わる頃、迎え行く」
「無理しなくても、電車で」
「いい、少しでも早く舞に会いたいから」
ユキ君に行ってらっしゃいのキスをする。彼はご機嫌な様子で出て行った。
なんか新婚さんみたいでにやけちゃう。
日曜日は彼氏の部屋で朝まで過ごす。
「うひゃっ通い妻ですか」