「舞があんなことするなんて、思わなかった」
高橋さんのお腹を触ってから、ユキ君はずっとご機嫌斜め。お店が終わってもまだ怒っている、と言うか拗ねていると言った方がいいのかな。大股広げ、椅子の背もたれに向かって座り、口をへの字に曲げ、じとっとこっちを睨んでいる。
「俺以外の男に触れて、しかもうっとりするなんて、どーゆーことだよ」
何回も謝ったのに、しつこいなぁ。謝ってダメなら、開き直ってみる?
「だって、クラッときちゃったんだもん。しょうがないでしょう」
ユキ君はあんぐり、私を指さし。
「開き直るのか、信じられねぇ」
唾を飛ばす勢い。
「分かった、分かりました。私が悪うございました」
「ったく、自分の彼女がこんな浮気者だとは思わなかったよ」
「大袈裟だって。あんまりすごい腹筋だったから、ちょっと触らせてもらっただけじゃない」
自分はどうなのよ。彼女が三人もいたくせにと思っても、口にはせず心の中で毒づくだけ。
「ねぇ、前に言ってなかった?自分の彼女が、他の男と抱き合っていても別に何とも思わないって」
「知らねーな。他の誰かだろ」
「言ったよ」
「なんも聞こえねぇな」
耳に指を入れ、とぼけた顔してる。
「むうっ」
「分かった、もうあいつら、連れて来ねぇ」