恋の時間ですよ 第6章 初めての

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チケットを購入、見ると乗り場が二つ。一部のゴンドラがシースルーになっていて、専用の乗り口があるらしい。

「へぇ、観覧車のゴンドラが選べるのか。一般とシースルーって、もちろんシースルーだろ」

ユキ君は迷いもなくシースルーのゴンドラを選んだ。乗り口の前でしばし待つことに。

「実は俺、これに乗るの、初めてなんだよな」

観覧車の方を見ながらユキ君はニコニコ。

「そうなの?もう何度も乗ってるのかと思った」

彼女と、心の中で呟いた。

「俺、ここに女の子と二人で来たのも初めてなんだけど」

ユキ君は、少しはにかんだ顔で軽く咳払い。

「その、舞は俺にとって」

「お待たせしました」

スタッフの声にユキ君は口を閉じた。

「いってらっしゃい」

ゴンドラに乗り込むとスタッフが扉を閉め、手を振ってお見送り。並んで座るとようやくユキ君が繋いでいた手を解く。

「おお、足元まで透けてる、すごいな」

私の隣ではしゃぐユキ君、足を広げて真下を眺めている。自分の気持ちに気付いてしまった私はいまいちテンションが上がらない。なんで彼女持ちの男なんて好きになっちゃったんだろう。しかも複数の彼女がいる軽い男なんてありえない。告白して付き合えたとしても、四番目だよ。向こうは私のこと子供扱いして、女と思っていないから振られる可能性大。ああ、隣に座っているのも辛いし、向かいのシートに移動しようかな、なんて考えているとユキ君がこっちを向いた。

「楽しかったか?」

「えっ、うん。連れて来てくれてありがとう」

「じゃあ、また一緒に来ないか」

素直に頷いてしまった。でもすぐに後悔。

「やっぱりやめとく。ユキ君とは、もう来ない」

向かいのシートへ移動する。

「それから会社以外でユキ君と会うのもこれで最後にする」

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