「この辺りが言われた住所ですよ」
おじさんがカーナビを見て言う。それからコンクリート打ちっぱなしの大きな家の横に、タクシーをとめた。人影が近づいて来る。白いスウエットの上下を着たユキ君だった。
「お金借りるだけなんで、ちょっと待っててください」
タクシーのおじさんに声を掛けタクシーを降りた。
「ユキ君、ごめんね」
ユキ君は、「鈍くさいよな?」と笑ってポケットからお金を取りだし。
「おっちゃん、いくら?」
精算してタクシーを帰らせてしまった。
「ここからどうやって帰るのよ。いくら何でも歩けないよ」
「俺が送る」
「でも、これ以上迷惑掛けるのも」
気が引ける。上目遣いでユキ君を見つめた。
「やっぱ悪いよ?」
ユキ君は私の頭に手を乗せ。
「ホント、世話のやける女だよな。この貸しは、デカいぞ?」
笑って言った。
「お金は、ちゃんと返すよ」
ピンッと鼻の頭を指で弾かれた。
「あほ、深夜割増しついてんだぞ。きっちり体で返せ」
「か、体?」
「舞の一日、俺にちょうだい」