駅の周辺は暗く、何もない。客待ちタクシーすらいない。流しのタクシーを捕まえるにも、どこに行けばいいのか・・・・。
ふと、気になった。ここからタクシーで帰ったら、いったい幾らかかるんだろう。今しがた、乗り越しでICOCAに千円チャージして残金は、千円と小銭が少々。
素直に奢ってもらえば良かったと後悔した。
泣きたい気持ちでいっぱい。
おうちへ帰りたい。
そうだ、こんな時こそ頼れる人がいるじゃない。
お兄ちゃんなら、ブツブツ文句言いながらでも、きっと迎えに来てくれるはずだ。お兄ちゃんヘルプミー。ところが電話に出ない。そういや、確か12時過ぎたら電源切れるようにしてるって前に言ってたっけ。お母ちゃんに電話しても、やっぱり出ない。期待はしていなかったけど。
「帰れないよーっ。どうしたらいいの」
困った。朝までここで過ごすにしても駅の外にはベンチすらない。大阪駅ならカフェもあるのに。こんな見知らぬ駅で朝までどうやっていればいいの?無理だ、怖いよ。迎えに来てくれそうな友人を探そうと、スマホを握った。
すると画面にユキ君の名前が。えっ、私まだ何もしてないよね。手の中でブーンブーンと震えているスマホ。
「も、もしもし?」
『舞、俺。あのよ』
どうしていつもタイミング良く現れるのだろう。
「お願い、助けてっ」