「遅いよ、三島さん」
尖らせた唇、鮮やかな赤い口紅がとても印象的だった。
「ごめん、ごめん。あ、紹介しとく。彼女、今日入社した」
「尾上です、宜しくお願いします」
「総務の林です。宜しくね」
林さんはにっこり微笑み。
「今朝、同じエレベーターに乗っていたのよ」
「そうだったんですか。エレベーター人が多くて」
息苦しくて、人の顔を見る余裕も無かったもんな。
「ねえ、尾上さん」
林さんは未使用のスプーンを私に向けた。
「ユキ君との関係は?」
唐突な質問に私は目を丸くさせ、林さんを見つめる。
「か、関係?」
「付き合っているの?」
「いません。たまたま公園で声を掛けられただけで」
両掌を広げ、ぶんぶん振って否定。
「あ・・・」
何故か、二人の先輩が口をぽかんと開けたまま固まった。視線は私の顔より上にある。
「その話、俺も聞きたいな」
不服そうな声で囁かれ。
「なぁ、舞ちゃん」
私は心の中で悲鳴を上げた。
ギャーッ、でたーっ!