恋の時間ですよ 第2章 年下のくせに

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真理さんが、急に遠い存在に思えてきた。いや、元々近い存在でもないのだけれど。

それにしても、将来自分のボスになるかもしれない人物を呼び捨てにするとは。

「真理さんとは親しいの?」

「別に、普通だよ」

素っ気ない言い方。普通ってどういう意味なんだろう。

「本当に駅でいいのか」

話題も変えようとしている感じがする。

「あ、うん。うち、駅裏の商店街で三好ってお好み焼き屋やってるの。そうだ、今度食べにおいでよ。今日のお礼にご馳走するから」

「俺、お好み焼き好きだからマジで行くぞ」

嬉しそうに言う。笑うと年下って感じ。うん、可愛いじゃない。

「土日ならいつでもいいよ」

M駅裏の商店街にはアーケードが無い。活性化を目指して10年前、レトロな街灯と入り口に立つ青空商店街の看板だけを残して天蓋部分が取り払われた。商店街に光が差すようになり客足も店舗も増えた。今はまだ真昼間で歩く人もまばらだが、夕方になるとタイムサービス目当てに買い物する人や寄り道する学生、夜になると居酒屋へ立ち寄る会社員で賑わいをみせる。

「あ、ここら辺でとめて」

路肩に車を寄せてもらった。シートベルトを外し。

「今日は色々ありがとう」

お礼を言った私に、彼は含んだ笑みを見せ。

「舞、またな」

会社へ戻って行った。

「年下のくせに」

 

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