恋の時間ですよ 第2章 年下のくせに

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少しばかり強引な気もするが、悪い奴ではなさそうだ。どちらかと言えば良い人かも。
車がスロープを上りきったところで。

「ねぇ、ユキさん」

声を掛けてみる。

苗字なのか名前なのかは知らないが、LINEの名前もユキだったし、部長もユキと呼んでいたし、別にいいよね。

「ユキ君でいいよ」

「いや、それはダメでしょう。先輩だもん」

「俺、年下だよ。舞より二つ下」

年下のくせに呼び捨てか。

「どうして私が年上だって分かったの?」

トイレの前で呼び捨てされた時は気づかなかったが、よく考えたらLINEを見れば名前は簡単に分かってしまう。でも年齢までは分からないはずなんだけど。

「メールアドレス。maimaiのあと数字が並んでいたから」

あ、なるほど。私はぽんと手を合わせた。そういえば名前だけではアドレス登録出来なくて、生年月日を追加したんだった。メールなんて滅多と使わないからすっかり忘れていた。それより聞きたいのは名前のことでも年齢のことでもない。

「実は私、簡単な面接だけで採用されたの。部長に聞いたら真理さんの紹介だから断れないって。知っていたら教えてほしいんだけど、真理さんて何者?」

「真理の紹介で来たのに、知らないってか?」

信じられないと言わんばかりの口調。だけど。

「うん、知らない」

そう言うしかない。だって、本当に知らないのだから。私の母親と真理さんの奥さんが知り合いだと説明すると、納得したのかユキ君は「ああ」と頷き「後継ぎだよ」と続けた。後継ぎ、つまりそれって・・・。

「社長になるの?」

「多分な」

 

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