「これからミーティングなんだ。悪いけど、ここで」
あまりにもあっさり決まって、ちょっと不安になった。あとで不採用の連絡がきたりしないだろうか。
「あの・・・本当に来週から出勤していいんですか?」
「どうして」
「だってこんな簡単に」
「真理さんの紹介なら大丈夫だと判断したんだ。期待してるよ」
時計を気にして非常階段扉の方へ向かう土方部長。彼が角を曲り、その姿が見えなくなるのを待ってから、私はエレベーターホールへと向かった。
「そうだ、タクシー呼ばなきゃ」
手にしたスマホの画面を見るとトークマークがついている。
『終わったか?』
ユキと呼ばれていたイケメンからだ。
『はい、おかげさまで。無事に雇用してもらうことになりました』
返信トークをすれば、またすぐにトークが返される。
『トイレの前で待ってろ』
トイレ?さっき私が駆け込んだトイレのことか?首を傾げながらも踵を返した。トイレの前で壁にもたれてぼんやり待っていると。
「舞」
ドキッ。何で名前を知っているの?私は目を瞬かせた。口を開こうとした時、何かが飛んできた。キャッチして広げて見れば黒と赤のジャージの上着。
「これは?」
「貸してやる。羽織っとけよ」
もしかして破れたスカートを隠すために?
袖を通すとぶかぶかで、私のお尻もすっぽり隠してくれる。何回も折り曲げないと手もでないほど大きなジャージからは、ほのかに男の香りがしていた。
「ありがとう」
「けど、そのかっこうで電車乗るのも変だよな。やっぱ送ってやるわ」
「でも、仕事はいいんですか?」
「昼休憩だよ」