「いえ、あの。・・・はぁ・・まぁ、そうです」
ちょっとカッコ悪い気がして、返事に戸惑ってしまった。
「この子ったらね、大学出て就職するから店継がないって啖呵切ったのに、結局見つからなくて店の手伝いしてるのよ。笑っちゃうでしょう」
就職出来ないのは本当だけど、他人の前でそんな言い方しなくてもいいのに。
「煩いなーっ。今だって、探してるんだからっ」
「何か資格持ってる?パソコンは出来る?」
「しょっ、商業簿記2級です。エクセルとかも多少なら・・・」
「じゃあ、うちの面接受けてみる?」
「えっ」
突然の話に私は目をパチクリさせた。もしかして、就職先を紹介してくれるってこと?
「経理課で欠員が二人も出てね。一人は寿退社、もう一人は産休で当分戻って来なくて、ちょうど昨日、派遣でも頼もうかって話していたところなんだよ」
「い、いいんですか?」
「もちろん、面接受からないとダメだけど。俺からも部長に口添えしておくよ」
イケメン男性はどう見ても三十代前半。そんな若い人の口添えはあまり期待しない方が良いよね。
だけど、二人も欠員が出たんでしょう。人材不足で困っているのは間違いないはず。会社で働いた経験がない私でも雇って良いと思うかもしれない。
だとしたら、これはチャンスじゃない?
そう、サラリーマンと結婚するためにも。
「宜しくお願いします」