恋の時間ですよ 第1章 就職しました

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ここは大阪の環状線が走る、とある駅前の某商店街の中にお好み焼き屋。「三好」と濃紺の暖簾がぶら下がっている。これが私の実家。

中学、高校と学校が終われば真っすぐ帰宅。何故なら店の手伝いが待っていたからだ。休日も店の手伝い、遊びに行く事なんてほとんどない。何の疑問もなくそうしてきたんだけど。受験が近づき、周囲の雰囲気に私も進学してみたい気持ちが強くなって。

母親を説得。

「何で、大学行く必要があるの?あんた、うちの店やるんじゃないの?」

母親は、私が店を継ぐものだと信じていたらしい。
が。

「就職するもん」

うわっ、怖っ。お母ちゃんの目がつり上がっている。大テコ手にファイティングポーズまでとって。

「普通の会社で働きたいから大学行く」

「ちょっと、何言ってんの」

「大学行ってる間も店は手伝うよ。だけど卒業したら私の好きにさせて。私は会社で働きたいの。それから同僚とか取引先とか。とにかく店をやっていない人と出会って恋愛して、結婚したいの。それが夢なの」

なかなか首を縦に振ってくれない母親を説得し、どうにか大学まで行かせてもらった。あとは就職すればよし。・・・のはずだった。
が、就職氷河期時代。そんなに甘くなかった。
短大卒業、社会に出て、社内恋愛のち結婚した友人もいるのに。

大学卒業して二年以上経つというのに、未だ私の職歴は真っ白のまま。
そして実家を手伝う日々。

私が握るのは恋人の手ではなく、包丁と大テコ。私を包むのは男性の熱い抱擁ではなく、鉄板の熱気。

ああっ、もうっ、どこかに出会いはないの?誰か、私を連れ出して!

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