一目惚れ、そんなのありえないと思っていた。
女を一目見て気に入ることは何度かあったが、セックスの対象というだけのこと。
ヒナに対する気持ちは、それとは少し違っていた。
セール支援者のリストが社内メールで届き、目を通す。
ドキッとした。昔、知り合った女の子と同じ名前を見つけたからだ。
大学生の頃、俺は、ちょっとした悩みを抱えていた。
その悩みを忘れさせてくれたのがSNSで知り合ったヒナだった。
たわいもない日常のことや好きな音楽や映画のことを書くだけだったが、楽しかった。
彼女のメッセージを読むだけで、にやけてしまう。
まるで恋人同士みいだな、なんて錯覚するほど。
顔も見たことのない高校生に恋をしていたのかもしれない。