好きなだけ触っていい。ユキ君のお許しが出た私は、思う存分、筋肉で張り詰めた体を堪能。
「これでしばらく、また会えなくても我慢できるかも」
満足気に言ったら、ユキ君は気に入らなかったらしい。ベッドで横たわる私の体に両手両足を絡めて、ギューッと抱きしめてきた。
「ぎゃっ」
「あーくそっ、やっぱ触らせるんじゃなかった」
なんて不満まで口にして。
「どうして」
「物足りないくらいにしておいた方が、すぐに俺と会いたくなるだろ」
「いつだって会いたいよ。毎日会っても足りないくらいなのに」
「だったら、一緒に暮らそう」
「うっ」
この話題になると私は尻込みしてしまう。そりゃあね、私だって一緒に住みたい。ずっと側にいたい。
でもね、店のこととか、お母ちゃんのこととか考えると……。
「今、返事しないとダメ? 引っ越すのは春なんだよね。もう少し、考えさせて」
ユキ君が諦めたような笑みを見せる。
「そんで、待たせておいて、断るんだろ」
「えっ」
「顔に書いてある。無理って、な。まぁ、分るけど。舞が家を出たら、おばさん一人になるもんな。俺も舞を悩ませたくないし、もういいよ。この話はなかったことにしよう」