なんでだって?
兄貴たちの企みが分かったからに決まってんだろう。
「おい、真理!どーなってんだよ、こいつ、マリンワールドにいやがる」
デカい声。思わずスマホを耳から引き離す。その声は、舞にも聞こえていた。心配そうな顔で俺を見る彼女の肩を抱き、俺は大丈夫だよと笑って見せた。
「おい、なんで城崎にいんだよ」
「俺の勝手だろう」
今度は、真理が電話口に出てきた。
「旅館予約しているんだぞ」
一部屋だけを予約していたら、兄貴たちの企みも気づかなかっただろう。真理が予約しといてやると言った翌日、部屋の様子が知りたくて、旅館に電話を掛けて分かったんだ。予約した部屋が三つもあるってね。
「俺の分は、キャンセルしたよ」
「誤解しないでくれ。邪魔しようなんて思ってないんだ。ただ、お前が本気になった相手だから、俺たちも嬉しかっただけで」
「分かってるよ。けど、そういうのはもう少し後でいいだろう」
「そうだな。邪魔して悪かったよ。舞ちゃんによろしく」
途中で真理の声が小さくなった。どうやら電話の向こう側に向かって話しているようだ。
「全部、お見通しだったみたいだ」
「えーっ、ユキのくせに、生意気ーっ」
その声は、世那か。世那は俺と同い年で、隣に住んでいた幼馴染。短大卒業後、薫と結婚して俺の義姉になった。
「ママ、おしっこー」
「えっ、トイレどこだっけ」
「俺が連れて行くよ。おいで、穂高」
電話の向こうは、随分と賑やかだ。しかし本当に信じられない奴らだな。
「お前の彼女を紹介してもらおうと思ってたのに」
また薫が電話口に出てきた。いい加減、切らせろよ。
「また、今度な。もういいだろう。切るぞ」
「知恵熱の原因作った女の子、見たかったのに」
「ちげーからっ。風邪だって言ってんだろうっ」