恋の時間ですよ 第8章 異動

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なんでだって?

兄貴たちの企みが分かったからに決まってんだろう。

「おい、真理!どーなってんだよ、こいつ、マリンワールドにいやがる」

デカい声。思わずスマホを耳から引き離す。その声は、舞にも聞こえていた。心配そうな顔で俺を見る彼女の肩を抱き、俺は大丈夫だよと笑って見せた。

「おい、なんで城崎にいんだよ」

「俺の勝手だろう」

今度は、真理が電話口に出てきた。

「旅館予約しているんだぞ」

一部屋だけを予約していたら、兄貴たちの企みも気づかなかっただろう。真理が予約しといてやると言った翌日、部屋の様子が知りたくて、旅館に電話を掛けて分かったんだ。予約した部屋が三つもあるってね。

「俺の分は、キャンセルしたよ」

「誤解しないでくれ。邪魔しようなんて思ってないんだ。ただ、お前が本気になった相手だから、俺たちも嬉しかっただけで」

「分かってるよ。けど、そういうのはもう少し後でいいだろう」

「そうだな。邪魔して悪かったよ。舞ちゃんによろしく」

途中で真理の声が小さくなった。どうやら電話の向こう側に向かって話しているようだ。

「全部、お見通しだったみたいだ」

「えーっ、ユキのくせに、生意気ーっ」

その声は、世那か。世那は俺と同い年で、隣に住んでいた幼馴染。短大卒業後、薫と結婚して俺の義姉になった。

「ママ、おしっこー」

「えっ、トイレどこだっけ」

「俺が連れて行くよ。おいで、穂高」

電話の向こうは、随分と賑やかだ。しかし本当に信じられない奴らだな。

「お前の彼女を紹介してもらおうと思ってたのに」

また薫が電話口に出てきた。いい加減、切らせろよ。

「また、今度な。もういいだろう。切るぞ」

「知恵熱の原因作った女の子、見たかったのに」

「ちげーからっ。風邪だって言ってんだろうっ」

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