恋の時間ですよ 第8章 異動

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舞と泊まりかけのデートだって日に、まさか親父から異動話が出るなんて。

「うわぁーっ、海っぺらに水族館があるんだ。冬の日本海って迫力ーっ」

波しぶきを見てはしゃぐ声にハッとした。今は異動のことを考えるのはよそう。

「風が冷たいな」

十二月、海辺の水族館は寒い。だが、二人でいればそれも気にならない。むしろ、嬉しいくらいだ。だってよ、舞が寒い寒いって俺にしがみついてくれるんだから。

「ふっ?」

「どうしたの?」

「いや、なんでもない。トドのダイビングが始まるみたいだから、それを見ようか」

「うん」

岩の上からトドがプールへダイブすれば、水しぶきと歓声が湧きあがり、俺の隣で舞も手を叩いて喜んでいる。正直、また水族館?なんて思われないかちょっと心配だったけど。

「ペンギンの散歩だって。ほら見て、可愛いーっ」

楽しそうにしている彼女を見て、ほっとした。

「アジ釣りやってみないか?料理もしてくれるんだって」

「やる、やる」

竿を借りて、アジ釣り体験。これが、結構難しい。すぐ糸が切れるんだ。どうにかお互い二匹づつ釣り上げて、天ぷらにしてもらった。
熱々の天ぷらを寒空の下で食っていると、テーブルに置いたスマホが鳴る。画面には「真理」の名前。

「なに?」

「どこにいるんだよ」

その声は、真理ではなく。

「薫か」

真ん中の兄貴、薫だった。

「来てんだろ?水族館」

「もちろん、来てるよ。城之崎マリンワールドに」

「は?なんで、城之崎なんだ」

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