後ろに並んでいたユキ君は電車に乗り込むと私から少し離れた所に立ち、駅に着いた後は私に声を掛けることもなく、一人で行ってしまった。
『待ち伏せしたり、食堂でも隣に座ったり、とにかく私に近寄らないで』確かにそうは言ったけど、だからって。
あからさまに「あ、そう。分かった」と言わんばかりの態度。
コンパスの長さが違うので追いつくはずもなく。
だんだん遠ざかっていく背中を見つめながら、私は後悔していた。
そのうち、また突然現れるんじゃないの?
「舞、まだ怒ってるのか」なんて言って。
でもそれっきりだった。
喜ぶべきなのに、彼を見ない日々は、どこか物足りない。
切なくて、寂しくて。
駅でも通勤途中の道でも、昼休みの食堂でも、ついあの背中を探してしまう。
そして。
いつしかそれが癖になっていた―――――。