結城産業って、大きな会社なんだって、つくづく思う。
小さな会社なら、ちょっとうろつけば、顔見ることも簡単なのに。
自分から近付くなと言った手前、気軽に電話も掛けられない。
「好きなんでしょう?」
「違っ。そんなんじゃ」
親友の二人がお好み焼を食べに来てくれた土曜日の夕方。給料日前のせいか、他に客はいない。お母ちゃんもパチンコへ行って、私たち三人だけ。となると小学生から付き合いのある美香と麻帆から遠慮ない言葉が飛ぶ。
「無理しちゃって」
「してないよ。だいたい、あいつは、彼女がいるんだから」
「ほら、それやきもちだよ」
美香が、大きなお腹摩りながらクスクス笑っている。
「だから、そんなんじゃないって」
「だって、あんた、そのユキ君とやらの話しかしてないよ?」
「もう、私の話はいいでしょう?それより、二人は最近どうなのよ?」
「えー、うちは平和よ。つまらないくらい」
「うちもー。欽ちゃん優しいし」
そーですか、そーですか。いいですね、平和で。いいですね、ラブラブで。
ポンとひっくり返した豚玉と洋食焼に、大ゴテを差し込み二人の前に寄せた。辛子、ソース、マヨネーズと鰹節を掛け、熱々のお好み焼をコテで口へ運ぶ二人を見て、私は軽くため息。
別にユキ君が、好きって訳じゃない。今まで、男の人と手を繋ぐとか、抱き締められるとか、経験したことがなかたから、そんなことするユキ君を意識してしまうだけで。
彼女持ちの男なんて・・・・。
彼女がいるクセに。
彼女いるクセに。
「あのボケ野郎っ」
やっぱムカつくっ。