小柄な女性、私より少し年上かな。背中まで伸びたサラサラのストレートヘアがよく似合う美人だ。
「あら、千佐子ちゃん」
いらっしゃいませと言いかけた時、お母ちゃんが先に声を掛けた。知り合い?私は振り返ってお母ちゃんを見る。
「旦那と一緒に来たの」
「噂のご主人?いっぺん見たかったのよ。カウンターでいい?」
いそいそとお母ちゃんがホールへ出て行き、カウンターの椅子をひく。
「うん。真理さん、いけるって」
女性の後ろから現れた男性。ぶつけそうな頭を少し屈めて店内へ入ってきた。
うわっ、モデルさん?と思わせるイケメンだ。こんな美しい顔している男性を生で見られるなんて。
薔薇か百合の花を背負ってんじゃないの?
世の中は不公平だ。いくら中身が大事といっても、やっぱり第一印象は外見から入る。
「やだーっ、本当に男前だわっ」
まるでアイドルが現れたみたいにお母ちゃんが嬉しい悲鳴をあげた。ま、それは分からなくもない。
「大袈裟ですよ」
男性は軽く微笑み、初めましてと小さく会釈する。
「お母ちゃん、どんな知り合いなの?」
つーか、どうやったらこんな美男美女と出会うんだ。
「陸と、ここの穂高君、同じスイミングクラブなの」