「千佐っちゃーん、小町ちゃんによろしくな」
「うん。おっちゃん、ジュースありがとう」
石を積んでもらっている間に、貰ったジュースを運転席でグビグビ飲んでいた時だった。
「嘘ーっ」
声が裏返った。
現場監督とお話してる、あの人、イケメンさんだ、間違いない。
マジですか? やっぱり運命の人だ。
「ねぇ、ねぇ。おっちゃん。田中のおっちゃん」
「何よ、千佐っちゃん」
私は、運転席から身を乗り出した。
「あの人、誰。すごいカッコいい、ほら、あそこ」
私は、イケメンさんを指さす。
田中のおっちゃんは、目を細め、イケメンさんを見ている。
「結城産業の真理君か」
結城産業って、確か、セメント会社だよね。
「セメント会社の人がなんで現場にいるの」
「今は、結城生コンの南支部にいて、営業やっているんだよ。親父さんの跡を継ぐために生コン業界で勉強中ってところか」
「跡を……継ぐ?」
「そう、結城産業の三代目になる人だよ」
結城生コンって、結城産業って、大手じゃないの。
どこが、ただの営業マンだよ。超、お坊ちゃんじゃないの。
つまりあれか、私みたいな庶民は、相手にしたくないから、名前も連絡先も教えてくれなかったんだ。
がっかりだな。運命だと思い込んでいたけど、いくらなんでも相手が悪すぎる。
彼女もいるって言ってたし、きっと、その彼女もどこぞのお嬢さんなんだろうな。