陸は私の甥っ子。兄夫婦は近所のマンションに住んでいる。
店を継ぐと思っていたのに、私が高校入学した同じ年、IT企業へ就職、私が大学入学の時に結婚。その二年後に子供が生まれた。
「あら、穂高君は?」
「旦那の実家です」
パートをしている兄嫁の代わりにお母ちゃんが時々スイミングクラブへの付き添いをしている。どうやら、その繋がりらしい。
「陸と穂高君、仲良しなのよ」
「穂高が陸君のこと大好きなんです」
「しかし、いい男ね。うちの娘も、こんな男前連れてきてくれないかしら」
「ほっとけ」
「ねえ、どこかにいい男いない?彼氏いなくて寂しいらしいのよ」
「ちょ、余計な事言わないでよっ」
噂話好きなどこかのおばさんみたいに話すお母ちゃん。つい怒鳴ってしまった。
「だって、あんた。就職も出来ない、彼氏も出来ないってぼやいてたじゃない」
「だからって、見ず知らずの人にペラペラしゃべらないでよっ」
「そんな大きな声で言わなくても聞こえるわよ」
私達のやりとりを見て、奥さんが。
「漫才みたいだね」
笑った。
「就職先さがしてるの?」