手をつき、勢いつけてベッドから降り、ユキ君に背を向け、パンツを引き上げる。
それからTシャツを脱ぎ、ニットのワンピースに素早く着替え、振り向いた。
「こんな状況で連れてきて、私の印象クソ悪いじゃないの」
「強硬手段だよ。誰かさん、何度誘ってもまた今度って逃げるから」
痛いところをつかれ、怯んでしまった。
うち来る? うち寄って行く? と軽いノリで誘われる度に苦笑いして、また今度ねって言ったのは確かだけど。
だってお父さん、私の勤めている会社の社長だよ。しかも怖いって噂耳にしたら怖気づくって。
「だ、だけど、酔っぱらって寝ているところを連れ込むのは卑怯だよ」
「連れ込むって大袈裟だな。介抱してやったんだろ」
「どこが介抱だよ、マジで信じられないっ」
介抱なら、ホテルへ連れて行けっつーの。
頭きた、マジで頭きた。
怒り心頭、マグマ噴火寸前。
「俺は、ちゃんと言ったぞ。飲み過ぎて寝ても知らないって。家に入る時も、お前に声掛けたし」
「知るかっ」