ウサギとヒナ 第六話 狙われた恋人

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 しれっと嘘つくなんて信じられない、心の中の呟きがウサギさんに聞こえたのだろうか。

「嘘は言ってない。嫁は身内だろ」

 よ、嫁。なんか、照れる。嬉しいような、恥ずかしいような。

「ま、まだ……他人です」
「ふーん。他人ね」

 私の左手の薬指を摩りながら、耳元で囁いた。

「帰ったら、覚えとけよ」
「ウ、ウサギさん、これからどうするんですか。加藤部長まで騙してるし」
「加藤さんは、本当のこと知ってるよ」
「そんなはず……。だって、加藤部長に、親戚って、叔父さんって言われたんですよ。おまけに私が東京希望してることを相談したって」
「ヒナを転勤させるために頼んだんだよ。加藤さんと俺の仲だからね。ついでに打ち明けると、人事部長の九条さんにも協力してもらった」
「加藤部長だけでなく、九条部長まで? 信じられない。そんなことが通る会社なんですか」

 ウサギさんはニッコリ笑って。

「さあ、交渉次第じゃない? はい、この話はこれでおしまい」

 ドアを押し開けようとするウサギさんを見て、思わず引き止めてしまった。

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