ウサギとヒナ 第二話 繋がる糸

小説
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 月曜日のことだ。
 申告用の書類を送ってきた生産担当へ返信メールを打っている最中に電話が鳴った。
 私のスマホではなく、会社で配られたガラケーだ。うちの会社は固定電話が少ない。
 二年ほど前にほとんどの固定電話を撤去したから。その代わり、社員全員にガラケーを持たせている。

「貿易部、河合です」
『宇佐見です、お疲れさま』

 思わずガラケーを落っことしそうになった。

「おっ……お疲れさまです」
『昼休み、自分のスマホからこの番号に電話掛けなおして。ついでにショートメールでID送って』
「えっ、でも」
『あの時の写真、他の人に見せてもいいの?』

 写真? ホテルで写真撮ったの……。

『俺もね、ヒナのこんな可愛い姿、晒したくないし』
「わ、分かりました。後で送ります」

 全然記憶ないけど、やっぱりウサギさんと……。うわーん、覚えてないよ。
 覚えているのはウサギさんの唇が柔らかったことだけ。

「ぎゃーっ、どうしよう、どうしよう」
「ヒナちゃん、どうしたの? 何か問題でも?」

 悶絶していると隣の先輩が心配そうにこっちを見ていた。

「あ、いえ。何でもないです」

 
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡

 

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