ウサギさんとデートしたのは十日前。あれから電話どころかLIMEトーク一つない。
遠距離なんて無理って断ったから、あっさり引き下がった?
それならそれで良かったじゃない。そう思うのに、やたらスマホを気にしている自分がいて……ううっ。
ギュっと固く目を閉じた。ううん、これで良かったんだ。
ウサギさんはカッコ良い、仕事も出来る。だからきっとモテる。
遠距離恋愛は大変だって聞く。浮気されないかずっと心配してなきゃならないし。
でも、週末大阪まで会いに来てくれると言った。
電話だってLIMEトークもするって。でも、でも、会いたいときに会えないんだよ。
でも、でも、でも。
でも、でも、でも、でも。
「やっぱ無理……」
「ヒナちゃん、何が無理?」
声を掛けられ、体がビクッと反応。
脇に経理の中島さんが立っていた。不思議そうな顔で私を見ている。無意識に声が出ていたなんて、私、ちょっとやばくない?
「あ、いえ。何でもないです」
手を振って、へらへら笑って誤魔化す。ああ、もう。仕事中に、何をやっているんだろう、私ってば。