結局、何も教えてくれなかった。やっぱ、相手にされていないんだろうな。
うーん、友だちになるにはどうしたらいいんだろう、考えていると、イケメンさんのスマホが震えだした。あ電話か。
「池谷、どうした? ……そうか、二千リューベならその値段でいい。それ以上値切るなら、断れ。かまわない。ああ、分かっている。これから会社戻るよ」
その会話で、ピンときた。
「イケメンさん、建築関係?」
「もう戻らないと、悪いけど先に出るよ」
私の質問に答えることもなくケメンさんは、席を立ち、伝票を手にする。
「あ、それ私が」
「今度、また会ったら、自販機のお茶でも買ってもらうよ。じゃあね」
にっこり笑ってレジで清算すると店を出て行った。
アドレスを知るどころか、名前も歳も分からないまま。
だけど私の心には、イケメンさんの爽やかな笑顔がしっかり刻み込まれていた。
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