朝食を終え、片付けのお手伝い。店で慣れているので、洗い物は得意。
「パン、すごく美味しかったです。ふわふわで、中でもかぼちゃの種が入ったの」
美味し過ぎて、遠慮を忘れてしまい、ガッツリ食べてしまって、もう胃袋はパンパンだ。
「本当? 嬉しいわ。うちは男しかいないでしょう。感想なんてくれないのよ。聞いても、どのパンも同じじゃないの、なんて言うし。本当、作り甲斐がないのよね」
お母さんはお皿を拭きながら、口を尖らせ、つまんないって表情をして見せる。
「ケーキも作るられるんですか? すごいですね。私なんて、お店でお好みを焼くくらいで、パンもケーキも作ったことないし」
お母さんの瞳がキラリと光った。
「じゃあ、今度、作ってみない? 私、教えるのも好きなの」
「いいんですか? 是非、お願いします」
「終わった?」
ユキ君が声を掛けてきた。
「あら、出掛けるの?」
「うん」
ユキ君は、冷蔵庫を開け、オレンジジュースをコップに注ぎ、ゴクッゴクッと喉を鳴らして飲んでいる。
飲み終わるとお母さんにコップを手渡し。
「晩御、飯いらないから」
その手を私の肩へ回す。親の前で、それはちょっと。焦った私はユキ君から離れようとした。けど、彼はそれを許さなくて。
ユキ君に肩を抱かれたまま、リビングへ。
「なんだ、もう帰るのか」
「はい、ありがとうございました。お邪魔しました」
「舞、また来いよ」
はうっ、再び呼び捨て。胸がドッキューン!心臓打ち抜かれた。
ドキドキしていると、キュッとお尻をつねられ、ハッとした。恐る恐るユキ君を見上げると、めっちゃ怖い顔していて。
「お前……覚えてろ」
耳元で囁く脅しの言葉、ゴクッと唾を飲む。
ううっ、ごめんなさい。でも、お父さん、カッコ良過ぎるだもん。