恋の時間ですよ 第12章 不安な気持ち

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いよいよ来週の土曜日は、ユキ君がS市へ引っ越すことになっている。
彼の借りたマンションは交通の便があまりよろしくない。快速に揺られ、普通に乗り換え二駅、そして最寄り駅からバスに乗る。しかも降りたバス停から十五分ほど歩く。駅近にしてくれたら良かったんだけどね。そしたら平日でも店の片付けが終わってから、のぞきに行けるのに。

「ユキもついに独立か」

「お前、飯どうすんの」

「適当にやりますよ」

今夜はバスケ仲間と飲み会。私も誘ってもらって、冷酒でご機嫌。次はなにを頼もうかと、ユキ君の隣でお酒のメニューとにらめっこ。

「あれ?」

忽然とメニューが消えた。

「舞、飲み過ぎると寝るから、もうやめとけ」

見るとユキ君が手に持っているではないか。

「えーっ、まだ二杯しか飲んでないよ。全然酔ってないし、平気だって」

私はメニューを奪い返そうと手を伸ばした。

「そんなに飲みたいのかよ。いいけど、寝たらどうなるか知らないぞ」

どうなるって、どうせホテルで寝るだけじゃない。平気、平気。うんうん、と頷くと「俺、ちゃんと前置きしたからね」と笑ってメニューを戻してくれた。

「すみませーん、この天吹を一合ください」

「あれ、ユキ。お前飲んでねぇの?」

「車だから」

「なに、車で舞ちゃんをどこかへ連れ込む気か」

「せっかくの週末デートですよ」

「もしかして今日お泊り?」

「もちろんですよ。それでなくても久々に会うのに、野暮なこと聞かないでくださいよ、鷹羽さん」

照れもせず、返したユキ君は、何故か気持ち悪いほどこニコニコして。
そんなユキ君の隣で私は、呑気に三杯目の冷酒を口にした。

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