恋の時間ですよ 第11章 嫉妬

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うーん、どうしよう。土方さんと二人っきりになってしまった。鍋はまだ半分ほど残っている。
土方さんは熱燗を注文、私はくどき上手をチビチビ。
ふいに目が合い、へらっと苦笑い。

「〆は、やっぱりご飯ですか?パスタも気になるところですよね」

ところが土方さんから返って来た言葉は、鍋の〆、ではなく。

「クリスマスイヴの日、彼女と最後のデートしてきたんだ」

一瞬、ぼうっとしてしまった。それからハッとして、身を乗り出し。

「林さんと、ですか」

土方さんは、いや、と否定。なんだ、違うのか。私は浮いたお尻を下ろし、冷酒をちびり。

「墓参りだよ」

クリスマスに彼女の墓参り?最後のデートってどういう意味?
ちろりを手に取り、土方さんのおちょこへお酒を注いだ。

「前に・・・・自分のせいだって言ってましたよね」

土方さんは無言、手元のおちょこをじっと見つめている。
聞かない方がよかったのかなと思っていると。

「十一年前、俺が大学四年の時。長野でスノボした帰り大雪に降られてね、高速道路も閉鎖されて下道で帰ることにしたんだ。ところがタイヤを溝に落としてしまった。山の中で電波は届かないし、雪はどんどん降ってくるしで、往生して。やっと大阪まで帰って来れたと思った矢先、俺の部屋に泊っていた従兄から電話が掛かってきた。『春樹兄ちゃん、どうしよう。彼女、誤解したかも』って。そいつ、引っ掛けた女を部屋へ連れ込んでたんだ」

「誤解って?」

「やってるところを見てしまったらしい。従兄も布団から出るに出れない状況で、追いかけそびれたって」

「スノボに行くって言ってなかったんですか」

「言ってたさ。ただ帰る時間がかなり遅れてたから。俺がもう帰っていると思って来たんだよ。部屋も暗かったし、声もよく似てるから俺が浮気したと勘違いして。そのすぐ後、彼女は車で事故を起こしてしまった。病院へ運ばれたけど、頭を強く打って意識も戻らないまま、二日後に息を引き取った」

土方さんは顔をしかめ、ぽつりと言った。

「命日なんだ、クリスマス」

だから、クリスマスはやらないって言ったんだ。

「スノボなんか行くんじゃなかった。後悔して、酷く落ちこんで、荒れて。そんな俺を慰めてくれたのが林なんだ。自分だって姉を失ったのに、誰も悪くないって言ってくれて」

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