恋の時間ですよ 第11章 嫉妬

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一月も半ば、ちょっとしたニュースが飛び込んできた。

「ちょっと、見てよ。林さんの腕」

「えっ」

ほっそりとした白い腕に、巻きついた時計。この冠マークは、まさかロレックス?
へぇ、と私は先輩の腕時計に顔を寄せる。淡いピンクの文字盤にシルバーのブレスレット、林さんによく似合っている。

「この人、婚約したんだよ。びっくりでしょう」

「婚約?彼氏いないって言ってたのに、いつの間に」

「でしょう。黙ってたのよ、ずるい女よね」

「だって言えないじゃない」

林さんは澄ました顔で言った。でもほんのり頬が赤い。

「同じ部署だもんね、ちょっと言いにくいか」

「同じ部署?」

「そう、平木君て言うんだけど。優しくて真面目で、三つ年下」

「もう、お喋りなんだから」

三島さんも自分のことみたいに、すごく嬉しそう。

「でもすごいですね。ロレックスなんて」

「婚約指輪の替わりなんだって。二人でペアの時計してるらしいよ。平木君家はお金持ちだもんね。ほら、知らない?平木屋って老舗の和菓子屋さん」

「あ、知ってます。最近百貨店にも売ってる、フルーツ大福とか、有名ですよね」

そっか、林さん、婚約したんだ。

「林さん、おめでとうこざいます」

「ありがとう」

幸せオーラに包まれた林さんを見ていると、私まで幸せな気持ちになってしまう。

ふと土方さんの言葉が頭の中に浮かんだ。
『あいつを大切に思ってくれている奴が側にいるみたいだし。お守り役は卒業だな』
きっと土方さんも喜んでいるに違いない。

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