恋の時間ですよ 第4章 最低!

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ビールをふいてしまった。慌てて手の甲で口を拭う。部長にまで勘違いされているなんて・・・・。

「付き合っていません」

もちろん、きっぱり否定。でもかなり動揺していたのか、うっかり手元のグラスを倒してしまい。

「あっ」

部長がおしぼりを数枚つかみ、濡れた台の上へ重ねてくれた。

「ありがとうございます」

「別に、隠すことないのに」

違うって言っているのに。

「隠していませんから。だいたい私には理想の結婚というものがあってですね」

私が狙っているのはあなたです。とまでは言えなかったが、サラリーマンと結婚して専業主婦をしたいと願望を打ち明けた。

だけど、どうしてなんだろう。目の前に理想の相手がいるのに。自分が嘘を言っているみたいな気がして、もやもや。鳴るかもしれないスマホが気になって、つい視線が向いてしまう。ひょっとして私、待っているのかな。ユキ君を?

「違う、そんなはずない」

心の声が口から飛び出し。

「えっ」

部長が目を丸くさせ、私を見ている。私は自分の口を掌で塞ぎ、もごもご。

「とにかく・・・・ユキ君とはそんな関係じゃないってことです」

そう、別に何でもない。ただの同僚だよ。二、三日姿が見えないから気になっているだけ、そうに決まっている。

「部長は、どうなんですか。結婚されていないみたいですけど」

「結婚か・・・そうだな」

部長は少し間を置き、「多分、出来ないだろうな」寂しそうに笑って言った。その視線の先に林さんがいたことを私は気づかないふりして。
グラスのビールを飲み干した。

「酒は強い方か」

「普通だと思います。ビールと酎ハイしか飲んだことないけど・・・・。でも飲むのは好きです」

「今度、俺と飲みに行く?」

「えっ・・・」

その時、電話が鳴った。私の心が躍っているのは部長から誘われたからなのか、それとも・・・・。

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