恋の時間ですよ 第4章 最低!

小説
Pocket

定時で仕事を終え、私と先輩二人は会社の1階にあるカフェで時間調整した後、店へ向かった。10分ほど歩くと、会社と駅の中間地点くらいに今夜の会場、居酒屋いなかがある。聞くところによると経理部では、二ヶ月に一度のペースで親睦会と称した飲み会や食事会があり、このいなかも頻繁に利用しているんだとか。

三島さんと林さんに続いて店内に入ると「いらっしゃいませ」店員の元気な声と笑顔のお出迎え。

脱いだ靴を下駄箱へ並べ、階段で二階の部屋へ。六人掛け用のテーブルが四つ、掘り炬燵式ってのが、ありがたい。テーブルの真ん中に設置されたカセットコンロ、今夜のメインはお鍋かな、なんて思いながら先輩たちと並んで座った。

自己紹介をさせられて、始まりは歓迎会っぽいムードだったが、時間が経てばただの宴会。わいわいがやがや、雑談の花が咲く。あちらのテーブルへ、こちらのテーブルへ、グラスを手に移動する人たち。まるでミツバチみたい。

隣で飲んでいた先輩二人もいつの間にか別のテーブルへ移動しているし、私も・・・・。向かいのテーブルには部長がいる。左隣は誰もいない。どうしよう、行ってもいいかな。いいよね、ビール瓶手に「お注ぎしまーす」とかなんとか言って、隣に座っちゃっても。

「飲んでるか?」

「えっ」

うわっ、予期せぬ展開。本人が目の前に移動して来たよ。

差し出されたビール瓶。私は両手でグラスを持ち、傾ける。きゃー、部長のお酌だ。

「少しは慣れたか」

「雰囲気だけは」

「仕事も慣れてくれよ」

なみなみと注がれ、ビールがグラスのふちでユラユラ。零れそう、私はグラスに唇を近づけた。

「ところで尾上さん、ユキの彼女なんだって?」

「ぶっ」

小説更新、諸々のお知らせはtwitterで

PVアクセスランキング にほんブログ村